優木せつ菜/故事/19話 熱い気持ち
外觀
| 角色 | 文字 | |
|---|---|---|
| ……なるほど。理解できました。そういうイメージを持てば いいのですね。このステップをクリアできそうな気が してきました。ありがとうございます、せつ菜さん 1 + | ||
| いえ! またなにかあったら、いつでも聞いてくださいね 2 + | ||
| はい、そうさせてもらいます 3 + | ||
| ところで、つかぬことを伺いますが……。 せつ菜さん、今日はお疲れですか? 4 | ||
| え!? 5 | ||
| ……私も気になってたんだ。 せつ菜ちゃん、今日はちょっと元気がないよね? どうかした? この間のライブの疲れが取れてない? | ||
| あ、いえ! 疲れはもう、完全に取れています! とても元気です! 6 + | ||
| じゃあ、元気がなさそうなのは、別のことが原因? | ||
| そんなに顔に出ていたでしょうか……。 元気をなくすというほどのことではないのですが……。 ……お二人から見て、前回のライブはどうでしたか? 8 + | ||
| ごめん。あの時、私は裏方だったから…… | ||
| あ、そうでしたね! すみません 9 | ||
| ううん。私こそ、ちゃんと見られなくてごめん。 でも、客席を覗いたとき、みんなすごく盛り上がってるのを見たよ | ||
| それにSNSでも、よかったって書き込みが たくさんあったから、大成功だったと思うんだけど…… | ||
| そう……ですよね? みんなの大好きを、私、届けることができましたよね……? できた、とは思っているんです。思ってはいるのですが…… 10 + | ||
| 何か気になることがある? | ||
| はい……。 期待に応えることはできたと思うのに、なんというか…… 11 + | ||
| 物足りなさがあったとか? | ||
| ……物足りなさがあった、とか? | ||
| 物足りなさ……ですか。 そうかもしれません 12 | ||
| いつもと違った? | ||
| はい……。うまく言えないのですが、 いつものように、胸を熱くすることができなかった気がします…… 13 + | ||
| もっと気持ちを盛り上げていかなければならないのに、 どうしても、うまくいかなくて…… 14 | ||
| こんなはずではなかったのに…… あれからずっと気が晴れないんです 15 | ||
| 元気がなかったのは、先日のライブが原因でしたか…… 16 | ||
| せつ菜さん、ご自身でわかっていなかったのですね。 それは当然のことだと思います。だってあれは いつものせつ菜さんのやり方ではありませんでしたから 18 + | ||
| え……? いつもの私のやり方ではなかったというのは、 どういうことですか? 私はいつも通り…… 19 | ||
| いつも通りではありませんでしたよね。誰かの「大好き」を代弁 しようとしていました。誰かの気持ちに寄り添ったからといって、 それを本当の意味で共有することは難しいのではないでしょうか? 20 + | ||
| そ、そんなことありません! 私がもっと、 みんなの「大好き」をしっかりと受け止めて理解をすれば、 「大好き」だって気持ちは伝わります! 21 | ||
| 「しっかりと受け止めて理解する」……ですか。 その考え方は、独善的だと思いませんか……? 22 | ||
| え……? 23 | ||
| ……いえ、今のはあくまで私個人の考えです。 押し付けるつもりはありません。だって、せつ菜さんの考え方も、 実現できるのなら、素晴らしいことだと思いますから 24 + | ||
| ……ただ、私はいつものせつ菜さんのライブが大好きで……って、 これでは押し付けになってしまいますね。忘れてください。 では……私は生徒会の仕事があるので、失礼します 25 + | ||
| ……私は、みんなの「大好き」を広めたいだけなのに…… 28 | ||
| 栞子さんの意見のほうが、正しいのでしょうか…… 私の考えは、独善的ですか? 30 | ||
| 私はみんなの「大好き」を知って、広めることができたら、 きっと素敵な世界になるって、そう思って…… 31 | ||
| 私も素敵な世界だと思う。 そう思ったから、新曲の方向性にも賛成したんだし | ||
| 栞子さんは、いつもの私のやり方ではなかったと言っていました。 いつもの私って……何でしょう? あなたから見たいつもの私というのは、どうですか? 32 | ||
| え? いつものせつ菜ちゃん……? そうだな……。 やっぱり「大好き」を全身で表現してる、って感じかな。 せつ菜ちゃんの「大好き」なことを……あっ! | ||
| どうしました? 33 | ||
| ……あのね、せつ菜ちゃん。 今回の曲、せつ菜ちゃん自身の気持ちを、心から乗せられた? | ||
| え? 34 | ||
| 上手く歌えなかったのは、 せつ菜ちゃんが心から「大好き」って言えることを 歌ってなかったからじゃないかな、って思って…… | ||
| それは……その、私の頑張りが足りなかった部分ですから……。 次はもっと頑張ります! みんなの気持ちを、もっともっと理解します! 35 + | ||
| せつ菜ちゃん、みんなの手紙を隅々まで読み込んでたよね。 オススメされた小説やアニメを見て、 みんなこういうのが好きなんだ、って目を輝かせてた…… | ||
| でも…… せつ菜ちゃん自身が、心を奪われたものはあった? | ||
| ……どの作品もとても素敵で、 みんなが夢中になるのはわかりました。 ただ、私自身が心を奪われていたかと言われると…… 36 + | ||
| 誰かの気持ちを受け止めることはできても、 その人と全く同じ気持ちになるとは、限らないんだよね…… | ||
| 栞子さんが言っていたのは、そういうことだったのですね……。 確かに、私はみんなと完全に同じ気持ちにはなれませんでした……。 そして、そのまま歌ってしまった…… 37 | ||
| 私が感じた違和感は、そこが原因だったのですね…… 38 | ||
| そうだね…… | ||
| …… 39 | ||
| 私の歌は、ほかの誰かの「大好き」ではなく、 私自身の「大好き」を目一杯込めたものじゃないとダメなんだ、 ということを、栞子さんに気付かされました 41 | ||
| なんだか、目が覚めた気がします。 私が熱くなるためには、絶対に欠かせないものがあるんです! 42 | ||
| それは、私自身が「大好き」なこと。 だから、次は私の「大好き」なことを歌います! 43 | ||
| 誰かの「大好き」なことも、わかりたいです。 でも、私の歌にとって一番大切なのは、 自分の「大好き」を熱く伝えることなんですよね! 44 + | ||
| うん。せつ菜ちゃんがそれを続けたら、きっとみんなも せつ菜ちゃんと同じように、自分の「大好き」なことを 誰よりも熱く語っちゃう、そんな世界になると思う! | ||
| 私は、せつ菜ちゃんが自分の大好きなことを、 周りが見えなくなっちゃうくらいに 熱く語ってる姿が、すっごく好きだよ! | ||