天王寺璃奈/故事/10話 つまづき
外觀
| 角色 | 文字 | |
|---|---|---|
| 相談があるんだけど……。 あの、私がやってることって、他の子からしたら、 ちょっとズルいって思う? 1 | ||
| え? 璃奈ちゃんいきなりどうしたの? 何かあった? | ||
| あ、今のは、別に落ち込んでるとかじゃ、ない。 ただ、普通だと、どう見えるのかなって思ったの 2 + | ||
| あなたや愛さんのおかげで、 SNSを見てくれる人、すごく増えた。 たくさんコメントも貰ってうれしい 3 | ||
| 璃奈ちゃんボードのこと、私も欲しいって言ってくれる人もいた 4 | ||
| 璃奈ちゃんボードは、私がみんなに素直な気持ちを 伝えることができる、魔法の道具なの。 5 | ||
| でも、みんなそういうことは知らないから スクールアイドルをやるための道具だって思う人もいるんだよね 6 | ||
| 顔を隠してるのは、やっぱりズルいことなのかなあ? 7 | ||
| そんなこと全然ないよ。だって璃奈ちゃんボードは、 璃奈ちゃんと愛ちゃんとで考えた大事な発明品なんだから | ||
| でも、顔、見たいよね……。 お話してるとき、私も、みんなの顔見るの好きだもん 8 | ||
| 私も、昔は、ちゃんとみんなと楽しくお話できたんだよ? ほんとなの。でも、いつからかは忘れちゃったけど、なんだか だんだんどんな顔をしたらいいのかわかんなくなっちゃった 9 | ||
| それってなにか原因があったのかな? 話を聞いてもいい? | ||
| これが原因……っていうのは、ないと思う。 たぶん、私の気持ちの問題なんだ 10 | ||
| 気持ちの問題? | ||
| 私の両親、ふたりともお仕事が忙しくて、私が大きくなるにつれて だんだん家を空けることが多くなっていったの 11 | ||
| それでも、電話やメールやお手紙や いろんな方法でお話をしてくれたんだ。だから、 ほんとは一緒にごはんを食べたりしたかったけど、我慢できた 12 | ||
| お父さんとお母さんには大事なお仕事があって、 そのお仕事でたくさんの人を助けてるから、 私も頑張らなきゃ、って 13 | ||
| 心配させないためには、一人で大丈夫なところを 見せなきゃって思って、なんでも一人でできるようになって、 週末や夜のお留守番だって平気になって…… 14 | ||
| あのね、一人でいるのは平気になったのに、面白いテレビを見ても 本を読んでも、だんだん笑えなくなっちゃったの。そのうち、 学校でお友達と話して、楽しくても、笑えなくなっちゃった 15 | ||
| それで、お友達とうまくお話ができなくなって、 そしたらもっと表情の作り方がわからなくなっていったの 16 | ||
| お友達とは仲良くしたかったけど、何を考えてるか わからないとか、怒ってるとか、全部真顔で言うから なんかウソっぽいとか言われて、むずかしいなって 17 | ||
| でもね、愛さんに会って、璃奈ちゃんボードも出来て、 それであなたに会って、スクールアイドルになって、 応援してくれる人もできて……今はとても幸せなの 18 | ||
| だから、もっともっといろんな人と繋がりたい。 もし璃奈ちゃんボードがズルいなら、それを取ってでも…… 19 | ||
| 璃奈ちゃんが本当にボードを外すっていうなら、私は応援するよ。 でも、さっきも言ったけど、璃奈ちゃんボードは もう璃奈ちゃんそのものだと私は思うんだ | ||
| 応援してくれてる人は、璃奈ちゃんボード越しでも 璃奈ちゃんの素直な気持ちを感じて応援してるんだよ | ||
| それが道具だって思ってる人って、 もしかして璃奈ちゃんのライブを見たことないんじゃないかな? | ||
| だから、今日はこのあいだのソロイベントの動画を アップしてみたらどう? 私が撮った映像があるから | ||
| 動画…… 20 | ||
| それを見れば、道具だなんて思わない | ||
| それを見れば、道具だなんて思わないもん | ||
| そうかな……? じゃあ、やってみる 21 | ||
| みんなのコメントを見て | ||
| 動画をアップしたあとの みんなからのコメントを見たら、きっとわかるよ | ||
| わかった。あなたが言うなら、そうする 22 | ||
| 璃奈ちゃんボードを外すかどうかは、 その後もう一度考えてみようよ | ||
| 璃奈ちゃんのライブを見た人たちの反応を みてからでも遅くないと思う | ||
| うん……そうする。ありがとう 23 | ||