桜坂しずく/故事/14話 抑えきれない想い
外觀
| 角色 | 文字 | |
|---|---|---|
| しずくちゃん、なにかいいことあった? | ||
| あっ、わかりますか? 1 | ||
| うん。さっきからずっとニコニコしてるもの。 それにどこかソワソワしてる | ||
| えへへ……実はですね、私が小さなころからずっとずっと 大好きな童話作家さんのサイン会に当選したんです! 2 + | ||
| すごい! それじゃ楽しみで仕方がないよね! | ||
| はい、当選通知を受け取ってから、ずっと興奮しちゃっていて…… あ、でもまだ夢みたいだなって思う気持ちもあって…… 3 | ||
| そうだ! 先輩にお願いしたいことがあるんですが、いいですか? 4 | ||
| 私にできることなら | ||
| 私でできることなら聞くけど | ||
| 少し恥ずかしいのですが…… 5 | ||
| なんでも言って | ||
| もちろん、なんでも言って | ||
| 先輩ならそう言ってくれると思ってました! 6 | ||
| お喋りの練習に付き合っていただけないでしょうか? 7 | ||
| お喋りの練習? どういうこと? | ||
| サインをしていただいている間、 作家さんとお喋りをすることができるんです 8 | ||
| それで、本の感想や感謝の気持ちを伝えられたらと 考えているのですが、うまく伝えられる自信がなくて 9 | ||
| 緊張して喋られないかもってこと? | ||
| いいえ、言いたいことが多すぎて、 限られた時間の中で話し終える自信がないんです 10 + | ||
| あー、そっち? そんなに言いたいことがあるなんて本当に好きなんだね | ||
| はい、憧れの存在です! 11 + | ||
| なら、後悔しないように思いを伝えないとね。 それで話せる時間ってどれくらいなの? | ||
| んー…… 10秒……長くても20秒程度だと思います 12 | ||
| うーん……かなり話せる内容が絞られるね。 それじゃ早速やってみようか | ||
| よろしくお願いします! 13 | ||
| ふぅー……新刊の発売おめでとうございます。 先生の作品は幼稚園に上がる前から拝読しております 14 | ||
| ほらしずくちゃん、ここで握手だよ | ||
| えっ、はい……。 えっと、あの、握手をお願いできませんか? 15 + | ||
| 先輩の手、あったかい……って、だめです! 握手なんてしたら頭が真っ白になってしまいます……! 16 + | ||
| 大丈夫、落ち着いて | ||
| ふうー…… 17 | ||
| 児童向けの童話ながらも作品ごとにシッカリとしたテーマが 設けられており、子供はもちろん大人も楽しめる奥深さに 毎回感銘を受けております 18 | ||
| 中でも『ガラスの猫』は 本が痛んでしまうくらい何度も何度も読み返しまして、 今うちにあるのは5冊目になります 19 | ||
| やはり、主人公である少女が抱える様々な―― 20 | ||
| ストップストップ! これじゃあ、20秒過ぎちゃうよ | ||
| そんな……ここからが本題なんですが…… 21 | ||
| あはは……これは、なかなか骨が折れそうだね | ||
| しずくちゃん、サイン会どうだった? 自分の気持ち、ちゃんと伝えられた? | ||
| ……聞かないでください…… 23 | ||
| え……? ええと、うまく話せなかった……? | ||
| う、うう……! 緊張してぜんぜん喋れませんでした……! あぁ、あんなに練習したのに、きっと何も伝わってないです……! 先生の顔を見たら、涙が出てなにも言えなくて……っ! 24 + | ||
| ううん。 それはきっと伝わってると思うな、しずくちゃんの気持ち。 口に出さなきゃわからないって言うけど、わかる部分もあると思う | ||
| 例えば、しずくちゃんのステージを見てくれてる人たち。 黙ってしずくちゃんのことを見ているけど、 顔を見たら喜んでくれてるってわかるでしょ? | ||
| あっ……! そ、そうですね。 それはとってもわかります! 伝わります! 25 | ||
| そっか、それと同じなんですよね、きっと…… 26 | ||
| うん。その場ではなにも言えなかったかもしれないけど、 きっとしずくちゃんの気持ちは伝わっているよ | ||
| そうですね……。 先生、とっても優しいお顔をしていらっしゃいました…… 27 | ||
| 今回伝えられなかったこと、お手紙に書いたらどうかな? | ||
| それはいいアイディアです!! 早速新しい便箋を用意しなくては! 先輩、一緒に選んでください♪ 28 | ||