桜坂しずく/故事/9話 鳥を演じるには!?
外觀
| 角色 | 文字 | |
|---|---|---|
| しずくちゃんが一人でくるなんて珍しいけど嬉しい! もっと頻繁に遊びにきてよ〜 1 | ||
| ……って、ごめん。 私たちがスクールアイドルを始めた理由だよね 2 | ||
| ん~、A-RISEが歌ってるところを見て、 これだー! って思ったから 3 | ||
| A-RISEはすごいんだよ! 場の空気がね、一瞬で変わるの! その空間にはA-RISEと自分しかいないような気持ちになるの! 4 | ||
| 穂乃果さんたちも、初めは憧れだったんですね…… 5 | ||
| うん! A-RISEを見て楽しそうだな、 私たちもやってみたいなって思ったんだ 6 | ||
| 楽しそうだから、やってみたい……なるほど、 シンプルですが、そういう想いこそ一番強い気持ちですよね…… 7 | ||
| そんなこと聞いてどうしたいのか知らないけど、 なにかを始めるのにいちいち理由なんかいる? なんとなく興味があるから、で十分よ 8 | ||
| う~、私が難しく考えすぎているのでしょうか……? 9 + | ||
| そうだわ、話を急に変えて申し訳ないんだけど、 しずくにお願いしたいことがあるの 10 | ||
| 私にですか、なんでしょう? 11 | ||
| 実は今度穂乃果がお芝居をすることに なったんだけど、困ったことがあって……。 良かったらアドバイスをしてもらえないかしら? 12 | ||
| そっか! しずくちゃんに聞くのが一番だよね! 13 | ||
| 確かに演劇経験者のアドバイスがあれば助かりますね 14 | ||
| 突然のお願いで申し訳ないけど、お願いできるかしら? 15 | ||
| お芝居のことでしたら……。 私でお役に立てるならぜひ! 16 | ||
| やった! 早速なんだけど、どうしたら役になりきれるのかな? 17 | ||
| どんな役なんですか? 18 | ||
| 鳥なの。 でも鳥の考えてることがなんなのかわからなくって……。 ねえ、鳥ってなに考えてると思う? 19 | ||
| と、鳥ですか!? 鳥…… 20 | ||
| 鳥ってどんなこと考えてるんだろう。 空飛んでる時、どんな気分なんだろ? 21 | ||
| 穂乃果ちゃんたら昨日、鳥の気持ちを知りたいからって 屋根から飛ぼうとしちゃって 22 | ||
| ええ!? 23 | ||
| 止めるの大変だったんですから。 飛ばなきゃ鳥の気持ちになれないだなんて 極端なんです、穂乃果は 24 | ||
| だってぇ~ 25 | ||
| だってじゃないわよ、まったく! 26 | ||
| 屋上から…… 27 | ||
| しずくちゃん、どうしたの? 28 | ||
| えっ……あ。 な、なんでもありません。なんでも…… 29 | ||
| あはは、穂乃果ちゃんらしいね | ||
| だけど、穂乃果さんの役へのアプローチの仕方を聞いて、 ようやく気付いたんです。私のどこが間違っていたのか 31 | ||
| どういうこと? | ||
| 私にとってのお芝居は、その「役」になりきることでした 32 | ||
| いえ、正確に言えば、 すでに誰かがやった表現を後から真似ていただけ…… お芝居を参考にお芝居をしていたんです 33 | ||
| だからそこに自分なりの表現がない…… 表現に血が通っていなかった 34 | ||
| 鳥を演じろと言われたら、私だったらきっと鳥の動きを 真似るところから入ると思います。穂乃果さんのように、 鳥の気持ちを理解しようという発想にはたどり着けないでしょう 35 | ||
| スクールアイドルもそうやっていたんですね、私。他のスクール アイドルの人たちを参考に真似てばかりで、自分だったら何を どう見せたいのか、それを真剣に考えてこなかった…… 36 | ||
| ……私は役者も、スクールアイドルも失格なのかもしれません 37 | ||
| 私はそうは思わないな。だって、しずくちゃんはもう、 これからどうすべきかってことを考え始めてるでしょ? | ||
| はい。まだ何も思い浮かびませんけど 38 | ||
| やっぱり、しずくちゃんはすごいよ | ||
| うん、思ったとおりだ。やっぱりしずくちゃんはすごいね | ||
| すごい……どういうことですか? 39 | ||
| そういうところ、しずくちゃんらしい | ||
| そういうところ、すごくしずくちゃんらしい。 しずくちゃんのいいところだよ | ||
| え? 先輩、なにを…… 40 | ||
| 普通だったら、そこで諦めちゃおうかなって 思ったりすると思うんだけど、しずくちゃんは 諦めるなんて少しも考えなかったでしょ? | ||
| それは……そうですね。 だって、それは私が諦める理由にはなりませんし 41 | ||
| だから大丈夫だよ。 しずくちゃんだけにしかできない表現、絶対に見つかると思う | ||
| そうでしょうか……。でも、ようやく少し考えなくては いけないことが見えた気がするんです。だから、頑張りますね! 42 | ||